ジャン=レオン・ジェローム《ピュグマリオンとガラテア》(部分) 1890年頃 ニューヨーク、メトロポリタン美術館 Gift of Louis C. Raegner, 1927 / 27.200

描かれた登場人物よりも背景を熱心に見ていたり、背景の中でも地上よりも空や雲を見ていたり。画家たちが先達の作品を見るときの意外な発言に驚いたり納得したりする。 野又穫は現実には存在しない空想上の建造物を生み出す。それは具象絵画でありながら時間、空間の特定ができない風景を描くということ。 メトロポリタン美術館展で野又に起こった奇妙な邂逅。🅼

ジョルジュ・ド・ラ・トゥール《女占い師》

ジョルジュ・ド・ラ・トゥール 《女占い師》
おそらく1630年代 ニューヨーク、メトロポリタン美術館
Rogers Fund, 1960 / 60.30

そして今回の主役《女占い師》。作品に描かれた内容も面白いのですが、これほどの絵技を間近で見られる機会は滅多にないと、我を忘れて画面を覗き込んでしまいました。

私は知らなかったのですが、解説によると画面左側が切り取られているそうです。たしかに、右側の人物とサインが画面に程よく収まっているのに対して、左端の金品をかすめ盗る人物の体は、半分以上画面の外にあります。理由は不明ですが、切断された作品であっても、希少性が生み出す価値に納得できるものがありました。

絵肌は厚く、暖色で描かれた画面が描き上がったばかりのような輝きを放っていて、絶妙な明暗と色調に惚れ惚れします。特に影の部分の色彩の美しさは比類がなく、同時に、この作品のサイズが横幅123.5cmとは到底信じられないほどの空間的な奥行きを作り出していました。この作品の美しさは、描きに描き、相当な時間を費やした結果なのだとよく理解できます。

登場人物の身につけている貴金属は、照明からの反射を効果的に利用するために絵の具が3mmほど盛り上げられ、衣装の描写でもあちらこちらに同じような部分を見つけ出すことができます。厚塗りについては、特に右から2番目の、正面に顔を向けた女性の顔面の絵具の厚さに驚かされました。厚塗りによって生じる小さなヒビが、今後経年劣化によって広がってしまうのではないかと、少し気にかかるところではあります。

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編集協力/Nomata Works & Studio

メトロポリタン美術館展 西洋絵画の500年

会期|開催中 – 2022年5月30日(月)
会場|国立新美術館 企画展示室1E
開館時間|10:00 – 18:00 [毎週金・土曜日は20:00まで 入場は閉館の30分前まで]
休館日|火曜日[ただし、5月3日(火・祝)は開館]
お問い合わせ|050-5541-8600 [ハローダイヤル]

■会期等、今後の諸事情により変更される場合があります。展覧会ホームページでご確認ください。

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